[2002年11月]


「火怨・上」           「火怨・下」

(高橋克彦
「火怨・下」[02/10/15][講談社文庫]--------------------------------------
朝廷の大軍を退けた蝦夷たちの前に、智将・坂上田村麻呂が立ちはだかる。威信を懸けた朝廷の逆襲がはじまった。信に足る武人・田村麻呂の出現で、阿弓流為は、民のため命を捨てる覚悟を決めた。北の大地に将たちが一人、また一人と果てていく。蝦夷の心を守り戦い抜いた古代の英雄を、圧倒的迫力で描く歴史巨編。
「火怨・上」[02/10/15][講談社文庫]---------------------------------------
辺境と蔑まれ、それゆえに朝廷の興味から遠ざけられ、平和に暮らしていた陸奥の民。八世紀、黄金を求めて支配せんとする朝廷の大軍に、蝦夷の若きリーダー・阿弓流為は遊撃戦を開始した。北の将たちの熱い思いと民の希望を担って。古代東北の英雄の生涯を空前のスケールで描く、吉川英治文学賞受賞の傑作。
[感想]--------------------------------------------------------------
前々から読みたかった高橋克彦さんの『火怨・北の耀星アテルイ』を読了した。本の感想のコーナーに書いているのだから、そりゃそうだろうとあなたは当然そう思うでしょう。何をいまさらと、、、が、であります。この作品は読み終えたことを声を大にしてあらためて言いたくなるほどの作品だという事です。俺は読んだぞっ!、、、ってね。(笑)

さて、作品でありますが、高橋さんは今回の『火怨』の前に、時系列的には数百年後の東北を舞台にした『炎立つ』を先に書かれています。当然の事ながら、わたしはその作品を既に読んでいます。すごい作品でした。作品の世界にどっぷり浸ってしまえば、自分の住んでいる地域周辺で、あのような事があった、、、人の生き死にを別にすれば、目頭が熱くなるどころではなく、感動で涙ぼろぼろ、鼻水ぐしゅぐしゅ、、、の大作でありました。(苦笑)『炎立つ』は文庫で5巻なんですが、その第1巻の冒頭の章は「北の埋火(うずみび)」と名付けられていました。なるほど、阿弓流為(アテルイ)等の灯した火は確実に根付いた、消える事無く我々の心に灯り続けていたのだと、あらためて感じます。作品はほんとにおもしろいですから、ぜひ読んでいただきたい。高橋克彦はSF伝奇や浮世絵ミステリー以外にも、こんなすごい作品を書いているのです。ファンには当たり前ですが。(笑)

この作品を読んで想起された事は、人の上に立つという事は、非常に難しいものであるという事です。あらためて書かなくても、率先垂範やらなにやらと、やはり人生の諸先輩たちが自分の経験を経て残してくれているものはたくさんありますが、結局自分がその立場に立ってみないと、具体的にはわからないんですね。やろうとしている人はたくさんいますが、、、今の自分はどうなんだろうと思うと、情けないの一語に尽きるかな。(苦笑)先日後輩とのいろんな話の中で、総門さんにはついていけますけど、あの人には、、、というような会話がありました。これは誤解のないように書いておきますが、わたしのなにかどこかが評価できるからついていく云々ではなく、対するあの人のいう事が、誰が聞いてもペケなので、、、そのような意味での相対評価なんですね。(苦笑)どうもわたしは仕事上で自分からやろうとせず人にばかり頼ろうとしたり、自分が楽をするために人を利用しようとしたり、、、というような人間には結構きつくあたってしまうところがありまして、、、(苦笑)ま、もうちょっと経験を積まねばなりますまい。(ちょっとどころではないか、、、)(笑)

もうひとつは、想いが伝えられる、伝わる、、、という事。これも言葉だけではけしてそうはなりません。やはり、自分の行動を見せながら、自然にそれが相手に共感してもらえなければならない。こちらとあちらの年齢差という事もあります。またまた脱線してしまった感想をむりやり戻しますと(笑)このあたりも阿弓流為は見事にやりぬきます。実戦で負けない戦を繰り返さざるを得ない中、これでいいか、ほんとうに自分のやりかたは間違っていないのか、、、悩みぬきながら20数年を戦い抜く、、、仲間も大切ですね。苦言を呈されれば、やはり感情的にはおもしろくはありませんが(苦笑)素直に聞いてみるという事が出来るだけでも、その人はある程度評価できます。逆に誰かに物申す、、、という事もわたしのような小心者だと結構勇気が要ります。(笑)それが上司や先輩の時は尚更です。(^^ゞそんな事をしたら一発で今の仕事や立場が吹っ飛ぶ、、、という場合が多いでしょう。言いたくても言えない、、、悶々とした思いを抱える方も多いんでしょうね。
あ、だんだん愚痴になってきた。(苦笑)阿弓流為のまわりにはいろんなタイプの人間が配されていました。それらの言を用い取り込みながら、方針や具体策を修正転換しつつの戦いであったからこそ、あのラストがあるわけですね。戦いきれたんですね。

阿弓流為等の時代から数百年後、『炎立つ』の阿部貞任や藤原常清、そして更に数百年、、、わたしはまだ未読ですが、『天を衝く』の時代へ、、、時は流れますが、阿弓流為等の想いは確実に北の地に住む人々に受け継がれていきます。それがむしょうに嬉しいわたしです。『火怨』この作品、お勧め度200%、です。(^Q^)/゛





「月に繭・上」          「月に繭・中」          「月に繭・下」

(福井晴敏
「月に繭、地には果実<下>」[01/08/25][幻冬舎文庫]
夥しい爆発の光が咲き乱れる宇宙は溶鉱炉と化し、次々と墜落する機体が月面を灼熱させる。多くの人間を犠牲にした戦争もついに佳境に。<ターンA>のコクピットで、ロランが見つける真実は?そして<ターンA>の意味とは?「ガンダム」の歴史に新たな一ページを刻み、小説の無限の可能性を提示するSF大河ロマンの金字塔。怒涛の完結編。
「月に繭、地には果実<中>」[01/08/25][幻冬舎文庫]
地球人としての生活に安息を覚えるロランをよそに、地球帰還作戦は決行された。抵抗する地球人だが、宇宙的兵器を操る月の民の戦力には遠く及ばない。しかし地球人が過去の遺産<ターンA>を発掘したことから、戦力は均衡。ロランは<ターンA>に乗り込み、月の民と戦うことに。エンターテインメント界の寵児が放つ、新世紀の「戦争と平和」。
「月に繭、地には果実<上>」[01/08/25][幻冬舎文庫]
かつて、地球を壊滅寸前にまで追い込んでしまった人類。一部の者は月に逃れて地球の再生を待ち、地球に生き残った人々は、おぞましい滅亡の記憶を封印した…。それから二千年の時を経て、月の民は地球帰還作戦を発動。決行に先駆け、地球に送り込まれた「献体」の中に、少年・ロランがいた。文学と「ガンダム」の歴史的コラボレーション。
[感想
望んだとおりのラストでした。わたし的にはまさに予定調和。しかしなあ、キエルはあのままだったんですね、、、もろくも予想はずれる、、、(-_-;)TVのほうでは現在『ガンダムシード』が放送されていますが、あれはどの年代の事なのかな?まさか、今回の『ターンA』の後という事はないでしょう、、、でしょう?(笑)間違えていましたら御免なさい。m(__)m。なんだかMSも12機出てくるそうなんですが、あんまり群像傾向が強くなるとつまんないんだよね。(^^ゞしかしなあ、、、あれらのキャラクター(見た目ですが)、、、わたしにゃどうしても馴染めませんな。あ、、、いつもの脱線。(^^ゞ『ターンA』に戻りますと、、、ほんとにね、人類はどこまでいっても人類なんですよね。大多数に属する哀しさ、虚しさ、そして、バイタリティ、ずるさ、、、もしかすると、人類は『種的な疲れ』を覚えないと変われないのかも知れないな。個ではなく、全体と言うのともちと違う、『種』としての、、、種(しゅ)とは種(たね)でもありますな。作者が言われる歴史の<揺り戻し>や<螺旋>をゆっくりと登る、、、云々は共感できる。植物は実りと共に種を送り出す。世代を経るためには冬を越さなくてはならない、、、その冬とは人類にとってなんなのか、、、?絶滅戦争を繰り返さざるを得ない人類の歴史とはいったい、、、そのような時代にも我々は、個として生きているのであります。ふんっ、そうするしかねえじゃねえか!(^Q^)/゛





「新・時空のクロスロード2」

(鷹見一幸
新・時空のクロス・ロード<2>「黄色い瞳の男の子」[02/10/15][電撃文庫]---------------------
「俺の…この能力は、一体何なんだ?」見たもの、味わったものの構造が瞬時にわかる少年・浅間健一。健一はその奇妙な力に疑問を持ちながらも、のどかな高校生活を送っていた。そんな彼の前にナサニエルと名乗る不思議な男が現われる。「その力が何なのか知りたくないかね?」ナサニエルが言うには健一の力は人工的なものであるらしい―。とまどう健一にナサニエルは告げる。「その力の答えが知りたければ私に付いてくるといい」。そして健一が見たものは―人々の心が荒みきった30年後の日本であった。そこには思いがけない出会いも待っていて…。話題の新シリーズ第2弾登場。
[感想]-------------------------------------------------------------------------
今回は壊滅的な食料危機が進行中の世界が主な舞台であります。穀死病という穀物類の収穫量を激減させてしまう病気が世界に蔓延、絶対的な食料の不足を、人々はどのような手段で、、、?というような設定です。さて、その世界で、主人公の健一は恋人?<朋恵>との間に生まれた自分と同じ年齢の娘<智美>と出会う、、、っていうのは、シリーズの読者ならおなじみの設定ですが、あちらは主人公の世界と歴史の展開の仕方が非常に近いパラレルワールドなんですが、時間軸がちょっとずれているんですね。こっちの世界よりのあちらの世界が約30年ほど進行が早く始まった世界だからなんです。ま、あとは読んでのお楽しみ、、、(^o^)さて、今回の作品でもやはり食糧自給の問題を考えさせられました。どうにかならないんでしょうかねえ、、、以前も書きましたので、あらためてここには書かないでおきますが、なんとかならないのかなあ、、、(-_-;)今後に期待する事は、ナサニエルが言う、地球人類が一致結束しても対処できるかどうか、、、という未曾有の大災害か大災厄?とは、いったいどのようなものか、という事です。現在シリーズはセカンドなんですが、高見さんは3巻目を現在書いているところらしいんですね。ま、そのように一気にシリーズそのものを終わらせてしまうようなところにはいかないとは思いますが、いつか、そのあたりの話も書いて欲しいと思います。あ、それから作中<カルナック列石>というのが出てきます。南フランスに実際にある、ま、謎の巨石遺物ですね。思わず検索して写真で確認してしまいました。ふーん、こういうのもあったんですねえ、、、わたしゃ、ストーンヘンジくらいしか知らなくて。(苦笑)興味のある方は石の並び、規模などを確認してみるのも面白いと思います。(^^ゞ。今回の作品にも、執事?の洗馬(せば)がちょこっと出てきます。いいなあ、好きだなわたしゃ。(^Q^)/゛





「ボーダーライン」

(真保裕一
[02/06/25][集英社文庫]---------------------------------------------------
ロサンゼルスの日系企業で働く探偵のサム永岡は、一人の若者を探すように命じられた。国境に近い町で見つけた彼は、天使のような笑顔を見せながらいきなり発砲してきた―。人としての境界を越えた者と、そんな息子の罪を贖おうとする父親。ふたりにかかわった永岡もまた、内なるボーダーラインを見つめる…。重層的なテーマが響く傑作長篇。
[感想]------------------------------------------------------------------
うーむ、良い作品でありました。やはり真保さんは<読み>ですね。(^o^)しかしなあ、生まれながらの犯罪者、それも殺人者というのはいるのかなあ、、、んー、やはりいるような気がする。ま、人は、どんなに他人から意見されても、諭されても、こうと決めてしまうと、もはや、それしか方法はないと思ってしまう場合があります。事の大小はいろいろあるでしょうし、その行動の途中でさえ、心が揺れる事はあるでしょうが、結果的にそこへ突っ走ってしまう、、、もちろん、そういう事が良い場合もありましょう。確信という事、それ自体をけしてあーだこーだ言うわけではないのですが、、、やはり、なるようにしかならない、、、という、いつもの結論に落ち着いてしまうか、、、(苦笑)あ、それは、なんにも考える事をせずに、行動もせずに、という事ではないのです。精一杯がんばっても、、、という場合なんです。いくら言っても伝わらない人、真剣に聞こうとしない人は結構いるものですよね。なんか疲れるんだよなあ。(笑)あ、脱線した。(^^ゞま、そんなような事を考えさせられた作品でしたね。お勧め度は★5つ!(^Q^)/゛





「リターナー」

(山崎貴
[02/07/30][角川書店]----------------------------------------------
男の名はミヤモト。闇取引の現場に潜入し、足のつかないブラック・マネーを強奪し依頼者に戻す「リターナー」。少女の名はミリ。82年後の未来からある任務を背負ってやってきた。性別、国籍そして時空さえも異なる二人が、一つの目的を通して次第に心を通わせていく。しかし、彼らの前に殺人マシーン・溝口が立ちはだかる!彼らの運命は、そして二人の心は時を越えてつながるのか。過去に傷を持ち、誰とも心を通わせない孤独な主人公ミヤモト。彼の前に突如現れた少女、ミリ。未来から来たと言うその少女と行動を共にするうちに、ミヤモトは彼女の瞳の奥底に自分と同じ深い傷があることを感じ始める。
[感想]------------------------------------------------------------
うーん、、、期待していたんだよなあ、この作品。「ジュブナイル」が結構良かったですからね。(^^ゞまあ悪くはなかったんですが、、、ちょっと期待が大きすぎたかなあ、、、(苦笑)ま、これは『見る』作品だと思います。わたしはまだ見ていませんが、封切りは8月31日だったそうですから、既にご覧の方もおいでになると思います。見たら、わたしも良いと思うと思います。(笑)山崎さん、本にするならもうちょっと深みが欲しい、、、。こういうタイプの作品のラストは、ほとんど問題は解決して、最後に主人公たちの行く末(死んでしまったりとか、時間に阻まれて会えないとか、、、)が、余韻として心に残る、、、ってな展開が多いんですが、この作品では、『会って』はいるが、一方がその『出会い』を再会だと認識できない状況、という形で演出しています。(くっそー、そういう事だったのか、、、)と、わたしは臍をかむ、事になるわけです。ストーリィを練りに練った人たちからしてみれば、してやったり、、、なんでしょうけどね。(苦笑)でも、いいじゃないですか、二人を状況の解るように会わせたって、、、というのは、わたしの趣味なんですけど。(^^ゞなんつーかな、『続・時をかける少女』で、<芳山君>が<ケン>に記憶を消されてしまいましたよね?あれが、数十年経った現在でも、わたしの心にトラウマとして、、、(^^ゞこういう作品で、わたしは素直にその後の登場人物たちに『想い』を馳せられるんですね。(笑)『時間テーマ』バンザイっ!(^Q^)/゛(今回はテーマじゃないか?)(^^ゞしかし、「ジュブナイル」も「リターナー」も”時間”が深く係わっている、、、山崎さんって、もしかして、同じ穴の狢?(^Q^)/゛





「伝説巨人イデオン」

(富野喜幸
伝説巨人イデオン3<発動編>[82/07/20][ソノラマ文庫]-----------------------------
宇宙の逃亡者として運命付けられたソロ・シップのクルーに安住の地は残されていなかった。いわば宇宙の果ての<ドウモウ・スター>にさえ、初めて連合軍を形成したバッフ・クランと地球の宇宙戦艦が待ち受け、デス・ドライブをかけて逃走する行く先々でバッフ・クランの機動メカが体当たり攻撃をかけてくる。戦闘の度にイデオン、ソロ・シップのバリヤーは強固になり、イデオンガンの破壊力は圧倒的なものになる。しかし、敵を撃破するのがイデの力ならば、敵を導き戦いを仕掛けさせるのも、また、イデの力だった。全てがイデの手の内にある。そして、ガンド・ロアでバッフクランが最終決戦を挑んだ時、真にイデが発動した!完結編。
伝説巨人イデオン2<胎動編>[82/03/05][ソノラマ文庫]------------------------------
ソロ星を脱出し崩壊したブラジラーを後にしたソロ・シップをバッフ・クランの外宇宙船は執拗に追尾していた。広大な宇宙空間で追う者と追われる者とが、二度、三度と接触する。そのたびに両者の戦闘に巻き込まれた植民星アジアンが、衛生月が壊滅的な打撃を受け、死にゆく者のうめきがソロ・シップのクルーの耳を打つ。全てがイデの成せる技なのか。全てがイデの巨大な意志によるものなのか、、、では、イデとはなんだ!?それは戦闘の最中に愛する少女を自らの手にかけてしまったコスモが、ベスの愛を支えにするカララが、帰るべき母星を失ったソロ・シップのクルーの全てが抱く、痛切な疑問であった。
伝説巨人イデオン1<覚醒編>[81/11/25][ソノラマ文庫]------------------------------
ソロ星、バッフ・クラン名<ロゴ・ダウ>。地球が宇宙の第四の拠点として開拓を目指し、バッフ・クランがイデの伝説に導かれて捜索隊を派遣したこの星で、二つの異星文明が交錯した。接触は戦闘の形態をとった。異星人発見に恐慌をきたしたバッフ・クランが地球移民団に攻撃を加えたからだった。そしてその時、イデオンが覚醒し、自らの意思で発動した。地球移民団が第六文明人の遺跡と呼ぶソロ星に埋もれていた謎の三機のマシーンが合体し、巨大な人型のマシーンとして立ち上がったのだ。「違う!伝説の巨人があんなロボットであるはずがない!」カララの叫びをよそに、虚空に屹立するロボット、イデオンは、だが、オーラを放つ人の姿に見えた。
[感想]--------------------------------------------------------------------
全ての発端は<第六文明人>であったのだな、、、地球人もバックラン人もまた、、、そうだ、思い出した。(笑)いや、しかし懐かしかった。TVで放送されていた当時は、結構楽しみにしていたんだ。(^^ゞ登場人物たちの、ちょっと硬めな物言いが珍しかったことを覚えている。(苦笑)まあ、しかし、イデと化した第六文明人のなんと勝手な事か。別に彼らの精神性が高かったとか、そういう事ではないのだ。偶然、そのような事態に追い込まれたというだけで、、、それも自らが出来させた、、、力のあるものは、ないものの視点で考えるという事をせず、力のないものは、力あるものをとことん利用しようとする、、、ま、自らが生き残るためではあるのだが、、、なんだかそういう事が、延延と続いていくような気がする。





「4000年のアリバイ回廊」

(柄刀一
[02/09/20][光文社文庫]---------------------------------------------------
室戸沖1000メートルの深海で男の他殺体が発見された。被害者は、日本中が注目する縄文遺跡“高千穂ポンペイ”の発掘主任。発掘現場には当初、産廃処理施設の建設が予定されていたことから、その方面でのトラブルが殺人の動機と疑われるが…。一方、遺跡からも説明のつかない不可思議な発見が―。現代の謎と古代の謎が交錯する壮大な“魂の物語”。
[感想]------------------------------------------------------------------
作品中盤から俄然面白くなりました。(笑)それまでの専門的な分野のあれやこれやはちょっと退屈したな。(苦笑)ま、書いておかなければならない部分が多いと言うのもわかりますけどね。粗筋にある<高千穂ポンペイ>っていうのは、火砕流などで死んだ人や物の上に堆積物が降り注ぎ、発掘された時に、その人や物の型が骨以外そのまま空洞となって残っている、という状況です。(ちと、大雑把過ぎるので、興味のある方はどっか検索してみて下さいまし)(^^ゞこの場合は、縄文時代にある村が火山噴火のためそのような状態で全滅したという設定です。柄刀さんの前作でも謎解きはおもしろかったっけ、、、(^^ゞ遺跡の発掘って事で、もちろん考古学者が活躍するんですが、いろんな専門分野があるんですねえ。考古学以外のどんな学問であろうともそうなのでしょうが、ひとつの仮説を立ち上げるのには、その分野ばかりではなく、非常に広範な知識、そして、経験が必要とされるんですねえ。たいへんな職業だよなあ、、、あ、脱線した、、、(^^ゞえーとですね、おもしろかったのは、発掘された<骨>の状態と遺伝子解析、そして、その他の発掘物から、それらの人たちの当時の生活や、村の構成、人間関係(血縁関係)などが、あざやかに導き出される部分、そして、その村は、呪術者たちが中心となっていた、ある意味<特異>な村だったのですが、そこで重要とされていた事、その現れ方ですね。結構引き込まれてしまいました。(苦笑)わたしゃ、中学の時は考古学クラブだったのも影響多いかな。(^Q^)/゛でなくてもほんと面白かったです。あ、殺人事件自体はあんまし、、、(^^ゞでも、お勧め度は高いですね。





「青の炎」

(貴志祐介
[02/10/25][角川文庫]----------------------------------------------------
櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。
[感想]------------------------------------------------------------------
わたしがもし主人公なら、、、と考えましたが、それは現在の自分の年齢や経験から導き出すもので、17歳という年齢で下す結論とはやはり違ったものになってしまうでしょう。が、あえて書いておけば、殺してやりたい、、、と思うだけで実際は何も出来ない、あるいは、突発的に殺してしまう、、、というところかなあと思います。(^^ゞま、こんな事件が起きてしまった根本原因は<曽根>なんですが、わたしを苛立たせたのは、母親の優柔不断さです。曽根に弱みを握られていたから?それをされると娘に、、、だから?きちんと最初にどちらをとったほうが良いのかが判断できていれば、ここまで悲惨なことにならなくて済んだはず。傷付いた心は癒す事が出来るかもしれない。しかし、死んでしまった者は生き返ることはけして出来ないのです。ま、息子がこういう手段に出るとは母親は思いもしていなかったんでしょうけれど。曽根を家庭から排除する事を決断し、実行しなかった、その点で彼女は自分で自分の大切な家族を失い、家庭を崩壊させてしまったわけです。結果論?そうかもしれません。でも、世の中ってほとんど100%そうなんではないでしょうか。(苦笑)





「有限と微小のパン」

(森博嗣
[01/11/15][講談社文庫]---------------------------------------------------
日本最大のソフトメーカが経営するテーマパークを訪れた西之園萌絵と友人・牧野洋子、反町愛。パークでは過去に「シードラゴン事件」と呼ばれる死体消失事件があったという。萌絵たちを待ち受ける新たな事件、そして謎。核心に存在する、偉大な知性の正体は…。S&Mシリーズの金字塔となる傑作長編。
[感想]------------------------------------------------------------------
森博嗣さんの作品はこれでようやく2冊目なんですが、読了したのは今回が初めてです。(苦笑)「全てがFになる」は途中で挫折しております。何で読めなかったかは忘れてしまいましたが、、、シリーズ物だそうなので、これだけ読んで判断するのはなあと思いますが、例の博士、超天才、超天才というわりにはなんか普通っぽくてねえ。(^^ゞ対する教授をはじめとする面々もいまひとつだし、、、これだけの内容のためにあんなに字数が必要なのだろうか、、、ま、人それぞれです。わたしゃそう感じただけで。しかし、多重人格に近い、全ての人格が同時に『ステージ』にのっていてスポットがあたった状態で、その時々で突然『発言』する、、、(という認識で良いのかな?)っていうのは、ちょっと納得しにくいなあ。(苦笑)『統合』はされていないが、平時は表に現れている人格が自然と決まっている、、、役割分担なんでしょうかね?(苦笑)以前の作品は、読むか読むないか、、、うーむ。(-_-)